日本環境学会幹事会では、2016年5月20日に「熊本地震を受けて川内原発の稼働停止と全ての原発の再稼働中断を求める」声明を発表しました。
幹事会声明の全文は以下のPDFからもご覧いただけます。
日本環境学会声明「熊本地震を受けて川内原発の稼働停止と全ての原発の再稼働中断を求める」(PDFファイル)
熊本地震を受けて川内原発の稼働停止と全ての原発の再稼働中断を求める
2016年5月20日 日本環境学会幹事会
甚大な被害をもたらした熊本地震が発生してから約1ヶ月が過ぎたが、熊本県や大分県では活発な地震活動が継続しており、避難生活の解消や災害復興に向けて多くの困難に直面している。この震災の被害集中地域では地震が来ないと市民の間では信じられていたが、この度の地震は日本列島のどこにでも地震リスクが存在していることを改めて知らしめた。熊本地震は、福島第一原発事故の再発を想起させ、被災地に近く全国で唯一稼働中の川内原発や、再稼働審査中の玄海原発と伊方原発で放射能汚染事故を引き起こしかねないと不安を感じる住民や国民が多い。そうした中で、原子力規制委員会は、「事故が起きる前に停止するよう設計している」「どういう状況が起こっても今の川内原発で想定外の事故が起きるとは判断していない」として、川内原発の安全性を確認することなく、稼働継続を決めた(4月18日)。
今後、原発周辺の活断層による大規模な地震が起こる可能性が指摘されている。現在、日本では2,000以上もの活断層が見つかっているが、未知の活断層も多くあると考えられている。熊本地震では新幹線や高速道路などの広域交通網が寸断され、救助や被災者支援活動に大きな支障をきたした。原発の過酷事故が発生すれば、新幹線や道路網を使って安全に避難することはまさしく机上の空論であることが明白に示された。また、福島第一原発事故では、津波の決定的な影響は明らかにされているが、地震によって重要機器が損傷したのではないかという有力な指摘もなされており、基準地震動などの安全基準の妥当性に疑義が生じている。
このような原発リスクが解消されないにもかかわらず、原発を稼働させることは明らかに予防原則に反しており、地域住民の安全な生活を脅かしている。したがって、私たち幹事会は国や自治体、電力会社に対して次の3点について検討・実施を求める。
第一に、重大な事故を発生させない安全対策が全て実施されて安全性が確保されることを示し、また病院入院者や施設入所者、健康弱者を含む近隣居住者に対して、速やかで安全な避難計画が確保されない限り、川内原発を早急に稼働停止させ、伊方原発などの再稼働準備も中断させること。
第二に、原子力規制委員会は原発の過酷事故を回避できるように基準地震動などの安全基準を再検討すること。
第三に、原発リスクへ不安を感じる国民が多数存在していることから、予防原則を踏まえて脱原発社会の構築を早急に取り組むこと。
日本環境学会は、原発・エネルギー問題について、安全と環境保全のためには省エネ対策と再生可能エネルギー普及の促進を目指すべきだと考え、研究や実践活動に取り組み、学会としての声明や提言を発信してきた。私たちは、福島第一原発事故や熊本地震を教訓にして、エネルギー・環境の諸問題への批判や代替案を提起する研究活動に取り組み、持続可能な社会への転換に向けた政策提言を行っていく所存である。
以上