声明:東京都中央卸売市場(築地市場)の豊洲移転計画を憂慮する

東京都中央卸売市場(築地市場)の豊洲移転計画を憂慮する

2009 年2 月14 日
日本環境学会
日本科学者会議公害・環境問題研究委員会

 東京都中央卸売市場を、深刻な土壌汚染が発覚した、江東区豊洲の旧東京ガス(株)豊洲工場跡地に移転させようとする計画に関して、都が委嘱した「豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議」(以下、「技術会議」と略記。座長:原島文雄 東京電機大学教授、など7 名で構成)は、2 月6 日、東京都知事宛に報告書を提出した。その主旨を一言で要約すれば、「食品を扱う場としての市場の安全性を確保する上で、科学的・技術的かつ経済的な目途が付いた」というものである。
 私たちは、この結論は正しくないと考え、強くその撤回を求める。
 その理由は、大略以下の通りである。

(1)この技術会議は、08 年8 月15 日の第1 回から09 年2 月3 日の第12 回まで、すべて非公開で行われた。審議内容は各回、紙1~2 枚の「概要」がホームページ上に発表されるだけで、内容の当否を当事者以外が検証できる材料は何一つ提供されていない。その限りでは、この会議で行われた議論とその結論は、科学的な信憑性を全く有していない。

(2)石原都知事の主張に基づき、「新技術・新工法を広く公募し、判定した。」というのが技術会議のうたい文句であるが、答申内容を見る限りでは、在来工法の見かけだけを取り繕ったものを「新技術・新工法」と称しているにすぎない。また、新規性があればあるほど、実際に豊洲に適用して効果があるのかどうかを判定する、実証試験が欠かせないはずであるが、そのような作業は一切行われていない。二・三の提案者に対するヒアリングを除けば、すべては机上の作業に終始したのである。

(3)汚染土壌の現地浄化、遮水壁の簡略化等により、当初973 億円と試算されていた土壌改良費用を586 億円にまで削減したというのが、この報告書の「目玉」であるが、表土の完全搬出や、緻密な遮水壁設置による地下水流動の制御は、技術会議に先行した「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」(以下、「専門家会議」と略記。座長:平田健正 和歌山大学教授、など4 名で構成)の結論である。その具体化を任されただけの「技術会議」が、「専門家会議」の結論を一方的に「値切る」ことは、疑う余地のない越権である。また、本来ならば個々の処理作業や設備の内容、運転計画等を明示した上で行われるべき費用等の積算も、根拠が何一つ示されていない。これでは、処理作業全体が「安かろう悪かろう」になりかねない。

 この「技術会議」の設置直前、調査業者の最終報告書の提出期限まで2 ヵ月以上も残して、上記の「専門家会議」は08 年7 月28 日にあわただしく閉幕したが、その検討が如何に杜撰なものであったかは、その後のベンゾ(a)ピレンの高濃度汚染発覚、下層への汚染拡散を防ぐとされていた、有楽町層の最上部不透水層の欠落の発覚、などによって、白日の下に曝された。いわば危険サイドの情報を隠蔽した答申を、さらに値切った上で「技術会議」は「安全」を宣言したのである。このような都と、委嘱を受けた「研究者」の言い分をそれぞれ鵜呑みにしていたのでは、将来の潜在的な危険は、等しくすべての都民が負担せざるを得ないことになるだろう。学問を志す私たちとしては、このような状況を黙って見過ごすわけには行かない。

 広く都民の英知を集めて、公開された環境のもとで、豊洲地区の全面的な再調査・再評価を実施し、結論が実証されるまでは一切の移転準備作業を凍結すること。それすらも出来ないのであれば、移転計画自体を即刻取りやめて、築地での市場再整備を速やかに再開することを、この際、私たちは強く主張する。

右、声明する。


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