声明:「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」の終結・解散に当たって

日本環境学会は2008年8月9日、第34回研究発表会の総会において以下の声明を採択し、2008年8月20日に石原慎太郎東京都知事及び同専門家会議の平田健正座長に提出しました。

声明:「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」の終結・解散に当たって

2008年8月9日
日本環境学会第34回年会

 東京都が委嘱した「豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議」(座長・平田健正和歌山大学システム工学部教授・学部長ほか3名)は、去る7月26日の第9回会議において最終報告書を確定、都に手渡した。同委員会は、これをもって所期の任務を終えたとして解散を決め、都は、この報告書の「一定の対策を実施すれば、移転しても危険はない」との内容に沿って、築地にある中央卸売市場の豊洲移転に向けて「豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議」なるものを設置して、非公開ベースのまま実務作業を始めようとしている。
 私たちは、この事態を深く憂慮し、移転準備作業を直ちに中止するとともに、公正が担保される中立的な調査・研究組織を設けて、今回の専門家会議による調査の不備を是正することを強く希望するものである。

 今回の専門家会議メンバーの編成に当たっては、当学会員をはじめ、汚染の深刻さを心配する研究者は排除されたばかりか、当学会が出した2007年5月7日付の、石原知事に対する要請書、2008年2月18日付の石原知事・平田座長に宛てた公開質問状は、ことごとく黙殺された。その中には、現場への立入調査や試料採取、公開討論会の開催など、事業の客観性を担保するのに不可欠な、学術的要望も多く含まれていたのにもかかわらず、である。調査の不備は多岐にわたるが、たとえば、4122箇所の「詳細」調査にしても、約4000点についてはボーリング・コアの採取や現場での水質の記載を行なっていないなど、内容は粗雑を極めた。
 一例を挙げよう。埋め立て以前の軟弱な自然地層である「有楽町層」は、移転予定地の浅層部に広く分布し、問題となっている東京ガスの過去の工場操業に伴う地層汚染は、この層にまで及んでいる懸念が極めて濃いのに、専門家会議は、「有楽町層は不透水層であるから、汚染が及んだ可能性は低い。」として、「詳細」調査の対象からも除外した。これに見るように、具体的なデータがない状態で「安全宣言」を行なったことは、事実に即して論理と判断を組み立てて行く学問の本質から見て、邪道と言わざるをえない。
加えて、「安全」のためにはこのあと膨大な費用の支出と技術的困難を伴う対策工事が必要になるが、それらの成否にも、「専門家会議は一切責任を持たない」ことが最終盤で明言され、私たちを唖然とさせた。

 東京都は、この専門家会議の報告書を、移転を容認する事実上のゴー・サインと受け止め、今後は非公開の「技術会議」で残された課題の検討を行うとしているが、そのような姿勢は広範な都民の持つ不安と不信を助長するばかりで、何らの解決策にもつながらない。
 東京都は、真の食の安全と都民の健康を保障し、かつ貴重な税金の無駄遣いを防ぐために、冒頭に示したわれわれの希望を真摯に受け止め、誠意を持って情報の即時公開と、事態の本質的な解決に努力すべきである。われわれはそれらのことを、重ねてここに強く求めるものである。
 右、声明する。

<以上>


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